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最終話 ある魔導師の話(メイプル小説)

2009.03.31 22:39|メイプル小説

 扉は相変わらず、静かである。

 ナインスピリットはこう言っていた、

 「地上の創造を見届けた竜族は別の世界に旅立つために扉を開いた。」

 しかし、扉は竜族を外世界に移動させることを成功させたが、扉の制御に想像以上に苦戦してしまった。

 それが『闇』であるということ。


 
 そして、ナインスピリットから扉に関しての研究をしていた竜族の本を預かり

 私は今ここにいる…



 つまり、扉は外世界への移動手段としての意味合いもあるが私は別の側面をこの本から発見したのである。

 ただ本を読み解くだけではわからなかったが、

 魔法の研究に行き詰ったとき、私は扉の別の力に気づいたのである。




 「………!!」

 私は人間の言葉ではなく竜族の呪文を唱えた。これによって扉は活性化され開くことだろう。

 「ここからだ…、いよいよわかる。」

 竜族はなぜ、この世界から去ったのか?私は確信を持っていた。

 役目を終えたから?そうではない…。

 新たな力を求め、扉をくぐったのだ!

 つまり、扉は力の源泉。その一端に触れれば私が抱えていた壁などあっという間に越えられるだろう。



 
 扉が怪しく光りだす。この光こそ、私を別次元まで高めてくれる希望の光…。

 悩むことはない。むしろ気分が高揚しすぎておかしくなってしまいそうだ!早く一歩踏み出したい。

 扉が私一人を包み込む大きさになった時、私は…。





 その光は私を包み込むと瞬時に私の体全体を刺激した。

 すると、どうだ!

 あれほど行き詰っていた脳内の思考から溢れるほどに魔法の感覚が湧いてくるのだ!

 それは、一歩一歩扉の中を進むごとに強まっていく。

 今までの日々はこの一歩によって全て解決されていく。

 ならば、扉の向こうに進んだ竜族はどうなったのか??

 そう思ったが、脳内にあふれる魔法のイメージは止まらない。



 いや、止められない…。。



 もう、私は自分の意思はなくなっていた。止められないと思ったのはあとのことで、

 体は前に進むことを欲しているのだ。

 しかし、もはやそんなことはどうでもいい。

 扉の最後まで行くこと、それが今の目的だ…。




 扉の前に人が立っていた。グリトとハインズである。

 「遅かったようですね…。仕方ありません。ハインズ、用意はいいですか?」

 「…はい。」

 グリトが精神を集中させるとその場の大気が震えた。そしてその力は扉に向けられた…。





 俺は湧いてくる知識を制御できないでいた。確かにこの力は素晴らしい、だが…。

 「この体ではこの力を維持できない…何か別の体を用意しなくては!」

 そういうと同時に私を包んでいる光は細胞を活性化させ、

 熱を帯びるとこれまで抑えることのできなかった知識をコントロールすることができた。

 だが、これからだ。この体で私は、いや俺は全てを手に入れるのだ…。



 その時である!

 俺がいる空間が急激に歪みだしたのだ。歪みだすと元々不安定な空間である。

 あっという間に先の空間が消えたのだ。

 「ウオオオオオオ!誰だ!俺の邪魔をする奴は!!」

 俺は吠えた。しかし、その前に先の道が消滅したということは戻る道も危険なのである。

 扉の力によって膨大な知識が危険を訴えていた。そして導き出す答えは…

 死、死、死。

 死、死、死。

 その答えが俺の脳を満たしたとき、体は動くのを拒絶した。

 扉の力が未来の俺を予測、いや決定づけたことで体が決定に従ったのだ…。

 「俺はここで終わるのか!?ウオオオオオ!!」




 俺は死を覚悟した。いや、すでに決まったことだったのだ。残念なのはこの力を誰にも見せずに終わったこと。

 竜族がなぜ扉をくぐった後の消息がわからないのかも『闇』が現れたのも全て今なら話せる…なのに。

 ふと、ある器官が反応した。

 鼻である。

 そう、あの香りだ。だが、膨大な知識を得ても名前が思い出せない…。

 しかし、なぜだろう。この懐かしい香りは。気がつくと俺はその香りに身を任せていた。




 グリトは魔法で扉自体に強制的に閉じる力を加えた。

 元々自然の摂理には存在しない物であるから

 それを消し去ろうと精霊の力を使えば消滅まではいかないまでも

 相当の負荷を与えることができるはずだと。事実扉は閉じ、中から光に包まれた物体が放り出された。



 グリトは静かに言った。

 「ハインズ、異形の者を滅ぼすのです…」

 ハインズは詠唱をすますと呪文を物体に向けて放った。

 しかし、別方向から来た光の矢によってそれは消し去られた。

 「ロ、ロベイラ。」

 「お師匠様、ハインズ。何をなさっているんですか!?これは彼のはずでしょう??」

 ハインズは動揺を隠せない、知らなかったのだ。師匠にはモンスターの退治と告げられていた。

 「異形のものは必ずこの世界に闇を運びます。ならばその前に私は息の根を止めねばならないのです。例えそれがかつての弟子であっても…」

 だが、グリトの呪文もすぐにかき消された。

 俺が起きた瞬間に魔法で相殺したのだ。

 「ククク。お師匠サマ。扉はすばらしいところでしたよ。おかげで力を得ることができた。」

 


 だが、次の魔法をグリトに浴びせようとした瞬間、体に激痛が走ったのである。

 扉から強制的に放り出された体は不完全で、先ほどのやり取りで体が崩壊しつつあったのだ。

 「このままでは…グアアア。ハインズ、ロベイラ、師匠…た、助けてくれぇ…」

 その瞬間、グリトの放った魔法が俺を突き刺し、俺の記憶は途絶えた。




 

 シャリーン、シャリーン。

 牢屋に響く、足枷の音。

 あれからもう何年たったのかはわからない。

 扉の力を得たはずの俺が目覚めたのはこの牢屋の中であった。

 あれだけ素晴らしい力を得たはずがここでは力さえも封印されている。

 たぶん、あのハインズとロベイラという奴だろう。俺は奴等を許しはしない。

 俺の力を奪ったやつには復讐をしなくては…ククク。



 今日は雪に覆われたこの街も晴れているようだ。

 牢屋の外が少しのぞける格子窓から外を見ると、一輪の花が咲いている。

 ふと、頭が痛んだが思い出せそうもない。きっと思い出しても力には関係のないことだ。

 だが、あの匂いには何か懐かしいものを感じる。それが何なのか、俺にはわからない。

 ちょうど天気もいい。たまにはそんなくだらないことも考えなくては、牢屋の生活は退屈そのものだ。



 そう、俺はかつて魔法の神髄に触れた唯一の存在。

 なのに妬んだハインズとロベイラが俺をこの牢屋に閉じ込めた。

 俺の名前はシャモス。そう、偉大な魔導師シャモス…。




        ある魔導師の話。。。   FIN




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